第196回『やはりメディアはテレビだ?!』

▼「広告市場、底打ち」?!

「広告市場、底打ち」と言う新聞の見出しが目に飛び込んで来ました。
内容を見ると、電通はサッカーのワールドカップや参院選による広告が好調で、増収増益。博報堂は売上高は減らしたが事務所の集約といった効率化で経費を削減し、営業利益は高まった、とのこと。まことに喜ばしい限りであります。
大手2社の見解では、食品、飲料、家電、化粧品などの広告は回復基調にあるとのことです。
媒体別にはテレビやネットの広告が、伸びる反面、新聞、雑誌、ラジオは減少。2極化が進んでいると発表しています。
しかし、この記事、ちょっとおかしくないか?とも思います。
見方によっては、不況に向けての大本営発表的なプロパガンダとも言えなくはありません。
この情報ソースは、最大手2社からの情報をベースとしているからです。

▼勝者がすべて取る現実

 と同時に日本の広告業界は、大手、とくに電通一社に集約化されており、それが一層拍車が掛かっていることを物語ってもいる気がします。
また併せて、いまさらながらに「広告はなんといってもテレビ」と言う現実にも気が付かされます。
 インターネット広告が伸びていると言う意見もあるでしょうが、広告主が期待しているのはテレビであり、極言すれば広告会社選別の決め手は、そのテレビへの買い付け能力でしょう。現状オン・エアされているTVCMを見る限り「クリエイティビティ」には、多くの期待が寄せられていないようですが・・・。
 マーケターや広告専門家は、「費用対効果」と言いますが、そんなことは重箱をつつくような話で、実際はマスコミ=TV効果は・商品認知・売り場認知・人気の増幅・販売スタッフの動機付けなど「売れる環境」づくり。それを考えればテレビに勝るモノはないと断言出来ます。
例えば、向寒の時節、ユニクロのヒートテックに関する情報はテレビ主体で浸透しました。それに合わせてブランド広告が、新聞全ページカラーで展開されました。
不況を託つファンション・アパレル業界においてこうした大型広告投資はユニクロを断然優位にした、と思います。認知率の向上は、ボリューム市場においては優位に働くのは広告戦略の定石です。いったん出来上がったた「カジュアルはユニクロ」を覆すには、少なくともユニクロが投下した広告費の2倍は投入しなければならないでしょう。
少なくともわずかな金額で、こざかしい戦略を立案して対抗してもムダ。
なけなしのお金を削って投下した宣伝効果は、ほとんどがトップブランドに吸収され、そのブランドパワーをさらに強めることになることは過去に事例はいくらでもあります。

▼「待てば海路の日和あり」?

 長引く不況、市場の成熟とニッチ市場へのアプローチなどマーケティングと広告の役割には新しい創造性が求められています。このことは広告会社のイノベーションへのエンジンです。
 しかし、今回の「朗報?!」は、こうした「イノベーション」への期待を覆すものではないか?と懸念しています。

 なぜなら、、どうやら不況の風が止めば、再び儲ける機会は努力せずとも自ずとやってくるようだからです。問題は、それまでの体力。
不況は100年に一度のきびしく長期に渡っていますが、それを耐え抜けるだけの埋蔵金を広告会社は貯め込んでいるのでしょうか?
貧乏根性が染みついた私などはそうした思い一入です。
 通説を信じれば「20世紀型の大量消費を前提とした市場戦略が転換」され、生活者目線のニッチ市場が芽生えて、20世紀型ビジネスのモデルを変え、21世紀型のビジネスが態勢を占めるようになる」と言うことです。
当然、広告ビジネスは、「IT技術を背景としつつ市場の確保・育成などビジネス・インキュベーションとしての役割が期待され」ていました。
おそらくトレンドとしては、おそらくそうでしょう。

▼1千万、2千万はカネじゃない?

 しかし、一方、広告業界は、同質化競争の競争と過酷な価格・サービス競争により生存し得た企業だけが利を得ると言う旧態以前の発想に依存していると言う「現実」で、その表れこそ「広告市場は底を打った」ではないでしょうか?
私の親しいアドマンは「10億円以上のキャンペーン」を持ってこいと上司から発破を掛けられているそうです。細かい手間の掛かる仕事はありがた迷惑。従って乏しい広告費や先の見えない小事業への関わりには極めて消極的にならざるを得ないようです。高い給与のアドマンの生産性と効率を考えると、現状はともかくも一面の理はあるかもしれません。
 広告会社は、代理店ではなく、広告会社へ、さらにはビジネス支援会社へとその役割を標榜し、社屋も言っていることも「先端情報産業」イメージを創ってきています。
が、現実は、パッケージだけ、中身は昔のまま。景気の良さそうな金回りの良い企業や業種を嗅ぎ分け、ちゃっかり儲ける、濡れ手で粟のビジネスはなかなか止められない・・・のですね?
「変える必要がなければ、変えないのがいい」「金持ち喧嘩せず」で・さすが大人の知恵。
感服しております。
広告会社のイノベーション・・・儚い夢かもしれませんね。

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