マーケターとは根っからお節介なのかもしれない、とふと思います。
そう思ったきっかけは、最近、TVで私が手掛けた商品のCMに出逢ったことです。
この商品とはJJに代表される医薬品のカテゴリーアイテム。したがって味の素といえば「味の素」というレベルで、JJのブランドの認知度はNo1、商品の代名詞として市場を大きく占拠しています。
私がお手伝いしたのはその市場ではマイナーな企業の、競合的には当時シェアは3%前後のブランドの市場導入作業。そこで採用した戦略は徹底した商品アイデンティティPIの確立と限定されたニーズへの絞り込み。
おかげさまで導入1年近く経過後、シェアは7%へと急伸。ちょっと自慢できる成果だと内心自負しています。新製品キャンペーンコストも1億満たない省費用でした。
以後、通例のように大手広告会社に数年前に移行。いまは私とは無関係。
そこでふと当該商品のTVCMに出逢ったわけです。
まず気になったのは商品ラインの拡充。そしてTVCMという手法への疑問です。
いまさらのことではありませんが、多くの商品は知らず知らずに商品PI の曖昧化という危険な罠にはまりがちです。ラインを広げてシェアを拡充したいビジネスニーズは理解できますが、これには慎重な検証が必要です。
次にTVの問題ですが、かつての「男は黙ってサッポロビール」を例に出すまでもなくマイナー企業の広告はトップブランドに吸引され補強の役割までもしまう事実です。
マーケティングコミュニケーションとは、商品機能や差別性を訴求することではなく、見込み客の心の中にしっかりとした商品属性をポジシニングすること、つまりそれは商品の戦いではなく、「知覚の戦い」であることは常識と思いますが、しかし、こうした「常識」にはずれた動きがちょとした心配のタネになるわけです。
ある統計によると年間市場に参入する新製品は約15000前後にも上り、そのうち市場に生き残るのはわずか数%と言われています。
売り上げを拡大すること、評価が前年比で考える数字至上主義の流れのなか、営業の発言力は強力です。またTVの誘惑も魅力ですが、それに流されるとせっかくの開拓した市場を失うことにもなりかねません。もちろん広告会社も新製品の運命には責任はとってくれないでしょう。
そんなこんなで、かつて心に掛けた人への思いが残るように昔の「お仕事」製品にも心が残るのは私どもの職業の業でしょうか、ふと心が痛んだ次第です。