戦争広告代理店!?
お読みになりましたか?
とりわけコミュニケーションを業とする者にとっては、まさに触れてはならない、でも触れたい危ない「わな」に充ちたこの本、情報操作とボスニア紛争にまつわるかなり衝撃的なレポートです。
内容はについてはお読みになられるとして、強く惹かれるのはFor the Clientを遂行するプロフェッショナルな仕事振りのすごさでしょう。
この仕事人曰く「仕事は一言でいうとメッセージのマーケティング。マックはハンバーガーで世界にマーケティングしているように私たちはメッセージをマーケティングしているのです。ボスニア・ヘルツェゴビナの仕事ではセルビア人のミロシェビッチ大統領がいかに残虐な行為に及んでいるか、それがマーケティングすべきメッセージでした」。
このコンセプトのもと練り上げられたキャッチフレーズが「民族浄化」Ethnic Cleansingです。「民族」と「洗浄する」という語彙の組み合せは、ナチスの悪夢を思わせコトバ以上の威力を発揮し国際世論に影響を与えました。確かに民族紛争は、世界の各地で起こっており、余程の利害が絡まぬ限り見てみぬフリをするのが政治でありましょう。
しかし、ボスニア紛争は違った。この違いを生んだのは民族浄化というキャッチフレーズがあったか、なかったかの違いであったとも言えます。
いま北朝鮮問題が過熱しています。そして何よりも私たちにインパクトを持って訴えているのは「拉致=ラチ」というコトバとその響きのような気がします。
そしてふと思うのですが、このおぞましいコトバが生まれたのはなぜか?だれが使い始めたのか?これには意図が存在するのか、あるとすれば仕掛け人は?…などです。秋の夜長、きな臭い国状と考え合わせると想像が掻き立てられて眠れなくなる…思い過ごしでしょうか。
なにはともあれ、これが「戦争広告代理店」です。
*「戦争広告代理店」高木徹著 講談社刊1800円