第92号『公共資源のプライシング』

6月1日より駐車違反の取締がきびしくなりました。
全国各地の取締指定地域では、警察より依頼された民間企業が違法駐車の摘発に参加し、厳重なチェックを行い始めたとかで初日ということもあってトラブルも発生。
が、ともあれその官民協力の効果もあって駐車違反はめっきり減ったようで、渋滞に悩まされていた人々はニコニコ、一方では、こうした煽りを食らって宅配、引っ越し、コンビニへの配送など運送業にとっては今後の活動に支障を来すかも知れない大事と渋い顔。
違反取締に関する悲喜こもごもが当日の朝のTVでは報じられていました。

確かに今回の取締強化は、配送サービスに携わる事業者の方々には大きな影響があることでしょう。
ご承知のようにジャスト・インタイムとか時間指定とかでロジスティクスは高度なサービス事業に成長を遂げました。
しかし、こうした高いサービスへの要請が強まる一方で、それに応じるためのコストは逆に低く抑えられる傾向にあり、また燃費などは価格上昇の流れにあります。
加えて今回の取締強化はさらなるコストアップ、ひいては労働強化につながり、物流関係者には死活に関わる問題であろうことは容易に推測できます。

それでは違反駐車を業務用に関しては取締を緩和したら問題は解決するのでしょうか?

確かに物流価格を低く抑えるには役立つかも知れませんが、それよりは物流のあり方、さらにはいまの消費社会を考えていくことの方が大事だと思うのです。

考えてみれば今日まで消費社会は、大気のタダ使い、環境のタダ使い、自然浄化力への甘え、思いやりへの無配慮などなど、本来は支払うべき公共資源をタダ同然、さらには踏み倒して発展してきたといえるのではないでしょうか?
企業も生活者もタダの資源を使えば潤うのは当然でしょう。

しかし、これからはこうした考えは成り立ちません。
公共資源は財であり、タダではないこと、タダほど高いものはない、と言うことを企業も消費者も思い致さねばならない時代になったと思います。

私たちは、今日まで市場主義の名の下に、欲望の赴くままにタダの資源を費やしてきています。
しかしついにタダに依存した生産・暮らしが非効率となり、コスト高につながり始めた、そんな気がします。

物流事業の方々には冷たい物言いですが、違反駐車取締の問題はその典型的な表れではないでしょうか?

自己中心的でベンリな暮らしの維持には、それ相応の費用が掛かる現実が到来しつつあるのです。

こうした現実を物流事業者は強く主張すべきです。
そして公共を利用して利益を直接的、間接的に受ける消費者には、ベンリさに見合う対価を支払う必要を教育すべきでしょう。
今日までマーケティングは、必要needsを軽視し、欲望Wantsを重視し開発し続けてきました。しかし、いまや資源の限界という視点から「必要」と「欲望」との仕分けを考慮して資源の浪費を抑制する生活を提案しなければならないと思います。

駐車違反取締を風景と眺めつつ、これをきっかけにして、まずは公共財の適正なプライシングを社会が考えられ「地球市民」としての暮らしの指針が生まれるかもしれないと思った次第です。

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