▼エアコン火災発生拡大について思うこと
今年は猛暑です。そして30度前後の気温は、昼夜を問わないようで、寝苦しい熱帯夜(25度を越える)は48日続き、いままでの記録を上回ることは確実。おそらくこの原稿が出る頃には、記録更新に終止符を打っていることを期待します。
こうした中、エアコンの火災事故発生が相次ぎ、拡大しているとのことです。
この火災の危険があるエアコンは経年10年以上である場合が多く、こうした古いエアコン使用のお宅は要注意だとか。
これは我が家にも当てはまります。とくに2階のリビングのエアコンは、火元となりがちな室外機が屋上にあり、日頃の点検がしにくく心配のタネとなっています。
▼あるメンテナンスマンの思い出
妻とはこの数年、夏の季節を迎える毎に取り替えを検討していますが、幸いに無事夏を迎え、今夏の酷暑にもけなげに耐え、老夫婦を熱中症から守ってくれています。
この製品はD社の製品ですが、こうして20年近く持続しているのは機種の優秀性もありますが、それ以上にかつて不具合であった折に修理を担当してくれた方の腕と誠意のおかげではないかと思っています。
最近、とみに人の足元を見る商法が罷り通っていますが、この方は、何時までも使えるように修繕をしてくれたのです。エアコンは一般消費者にとっては決して安い買い物ではありません。可能な限り長寿命であることは何よりもありがたいことです。
買換えの際には、その方を通じてと思っていましたが、D社の組織では、販売とメンテナンスは別組織であり、その方のルートで購入してもその方の手を煩わすだけのようです。
▼変化を売る時代はもう終わり
マーケティングでは、CR(カスタマーリレーション)、CSR(企業の社会的責任)など耳障りの良いお題目が唱えられています。また低炭素社会・よりよい環境づくりなど声高に叫ばれています。ECO製品などいたずらに新規機能を付加し、省エネ、経済性、賢い消費者としての差別化など、あの手この手で「変化」を商売ネタにしています。地デジも同源でしよう。
しかし、これらいずれもが市場のパイを拡大したい、陳腐化で市場を創りたい、という言わば「衣の下に鎧が見える」類のものが多いのは消費者の立場から見ると不快です。
小難しい理屈は食うためにそれはそれでけっこうですが、マーケティングの本質を見失っては困ります。
もっと消費者の暮らしに貢献するかを考える時代が来ているというのに・・・。
▼北欧のトラックメーカーS社の設計思想
かつて私はトラックのマーケティングのお手伝いをしていたことがありました。
その企業は、トップメーカでしたが、マーケティングの軸足を、売り込むことではなく、メンテナンスとサービスに移そうとしていました。
例えば大型トラックに関しては北欧のS社の設計思想を研究し、シャシは生かしつつ、時代の要求に対応できるエンジン、ブレーキなど装置のユニット化を行ないユーザーのクルマが陳腐化しないよう配慮しトラック経営の負担の軽減を提言。顧客とのよりよい関係をつくり、同時に資源的にもムダの少ないクルマ造りを志向していました。
これはトラックに限りません。生産財のカテゴリーにはいる製品ではこうしたことは検討されていることを寡聞ですが耳にしていました。
一過性のお付き合いにはウンザリ!
いま多くの大型耐久消費財は、買換え需要で支えられています。そして現在の「パイが縮小する時代」にあっては、CSRによるブランド維持、CRによる顧客の安定化は重要は戦略のあることは論を待ちません。
しかし、こうした戦略は口先だけではうまく機能しません。
「男は黙って・・・」ではありませんが、自社の製品を愛する人を、出来るだけ増やしていくことがこれらマーケティングの王道。酷使されるこの夏のD社のエアコンを顧みるにつれ、思うことです。
私には出会ってよかった数少ない企業としてD社があります。新規を売り込むだけの手法にはウンザリ。一過性ではないお付き合いを企業に望みます。