▼お歳暮の商戦が始まりました。
今年は、感覚的にはそぐわないのですが、人々の懐具合は、ケッコウいいらしい?ですね。
報道によれば、平均39万2800円、昨年の暮れより1万2000円いいとのこと。また一部上場企業に限っては、リーマンショック前の業績に復帰、増収、増益も多いとかです。
当然こうした景気回復を敏感に反映しデパートなどでは売り場を構成しています。
私がよく出向くデパートでも同様です。
お歳暮の値段は平均3700円、人気は一番が西京漬けなど、ついで洋菓子、三位はハムだそうで、いずれも食品、しかも見栄えのするものが人気のようです。
が、こうしたお歳暮商戦が始まるとお客である私などは困ることもあります。
まずはお歳暮商材の品揃えに伴う売り場の移動です。これは歳暮に限りません。最近はデパートもイベントに力を入れており、かつての盆暮れだけでなく企画が頻出しその結果、なじみの売り場が見つけにくくなったり、さらにはこうしたイベント期間中無くなったりすることで多いに不便を強いられます。
▼蔓延している刹那主義ビジネス
これはすべての売り場に言えることですが、とりわけ食品をマグネットにする店舗では、こうした不便には、怒りさえ感じます。
私の例で言えば、最近ドイツパンに嵌っています。デパートですから、パンの売り場は多彩です。また有名レストランがお総菜ととも自家製のパンも売っています。しかし、パンはどこにでもあるブランドのパン、またそれらはフレンチ系がほとんどであるため、大同小異です。
ついでにパンで言えば、日本ではパン・ドミという食パンとさらに菓子パンが主体、バゲットなどは陰が薄いのが実情でしょう。バゲットは30年の歴史がありながら、15%弱のシェアに過ぎないようです。
したがってドイツパンは、まったく地味。マニアが買うくらいかも知れません。
土一升金一升の地価で店を構えている百貨店ですから、効率や生産性を考えたら当然、「地味な」商品はお引き取り願うと考えるのが筋かもしれません。
しかし、こうした「地味」を求める客からすれば腹の虫が治まりません。
一方、パンで例を引きましたが、売れ筋中心偏重の品揃え、売り場づくりはどのデパートさらには大型店にも通じます。
競争、競争と言いつつ実際は画一化が進行し、いわゆる「同質化競争」の戦場です。
発見する楽しさなど全くと言っていいほどありません。
東京近郊どこの都市・街に行っても同じ状況ですから、わざわざ都心やターミナルにいく必要はまったく感じません。
差別化、個性化を無視したその場しのぎの刹那主義ビジネスの蔓延、テナント・名品ブランドなど他人任せの無責任ビジネスは結局は店の寿命を縮める羽目となると思います。
いまや時間と費用を考えたらデパートに赴くのはムダ、とりわけ高齢者にはデパートは無用の存在で、事実、周りの高齢者は通販の方にショッピングの楽しみを求めています。
お歳暮などではなおさらでしょう。いまどきデパートの包装紙がステータスをもつなんて、過去の過去。むしろこだわれば「通販」に分があります。
▼「け」を豊かにする改装、リニュアルが必要では・・・?
不景気のなか、この数年、デパートは価格破壊の流れに抗すべく、売り場を改装してきました。結果、食品売り場でも宝石店と見紛うばかりの「おしゃれな」売り場づくり。マスコミの話題になっています。
ある意味、「食」が自己表現欲求のメディアとなってきていますから、「グルメ」「通」「贅沢な食卓」づくりなどをお手伝いするこうした売り場づくりは考えられないことではありません。
しかし、富裕層、こだわり層対象でビジネスは成立するでしょうか?これら対象は「グルマン」で食材にも金に糸目はつけないのでしょうか?知る限り富裕層・こだわり層といえども毎日パーティを開き高級ワインやフォワグラ、キャビアなど楽しんでいるわけではありません。日々の食卓は、「普通」です。当然ですが・・・。
いつの世も富裕層、こだわり層は存在しますが、こうした層が、これからの日本で態勢を占めることなどあり得るでしょうか?それより心配のタネは「普通のお客様」の減退や店離れではないでしょうか?
したがって、売り場から発信している情報が、大切なお客様の「普通のニーズ」に応え「リピータ化」に結びつけられるか、気になるところです。売り場は、どれくらいの頻度でお客様の来店を期待しているのでしょうか?お客様との関係をどのくらいの期間として考えているのでしょうか?
例えば「はれ」と「け」を考えた場合、なおさらです。
▼もっと商売人でありたい・・・?
まず宝石の様な売り場は「はれ」を考えたものでしょう。しかし、課題は販売スタッフの知識不足、縦割りの販売対応です。おそらく派遣店員で売り場は運営されているようですから、自店の商品については熟知して当然です。しかし、商品のカテゴリ、関連事情については不勉強です。
京都の漬け物売り場で、素材である京野菜についての常識を訊ねても適切な回答は得られませんでした。また京漬け物と東北の漬け物ではレジが違ったり、担当が異なったりして、それぞれ個別の販売対応です。私のささやかな経験ですが・・。
「け」については、わざわざ出向く理由の一つは、買い回り圏での商店の衰退です。少子高齢化は、日常食品材の纏め買いと同時に少量多品種の頻度買いも増大させます。したがって「け」をベースとした来店頻度向上を考えるとデパートには追い風が吹いています。
そこでは名物・名品よりも・鮮度と価格・味への満足・選ぶ楽しみ・販売量が重視されましょう。とくに公共交通を利用した持ち運びの利便も考えたいところです。
スクラップビルド・リニュアルも結構ですが、こうした「け」のニーズに応える生活者目線での売り場づくりとお届けやお取り置き、さらには御用聞き的な高齢者・子育てなど忙しい女性などに優しいサービスの開発こそ大切ではないか、と思います。
幸いデパートはブランドとして高い信頼性を保っています。
売り場やITネットに投資することも時流でしょうが、もっとデパートを身近な存在とし稼ぐ、しかも大きな投資を必要としない改善アイディア・お客様満足への工夫の余地は沢山あるのではないか?・・・売りの現場はむろんですが、とりわけ経営者、マーケターはハーバード・ビジネス流ではなくもっと商売人でありたいものです。
フツーの客の暮れの雑感です。