昨夜、映画「万引き家族」をレイトショーで観ました。
是枝裕和氏が監督・脚本・編集までを手がけ、主演であるリリー・フランキーさんと安藤サクラさんをはじめ、演技力抜群の俳優陣が、日本の社会の縮図のような一家を演じたこの作品は、カンヌ国際映画祭の最高賞である「パルムドール」を受賞し一躍話題に。
しかし日本の映画史に残る快挙にも関わらず、国内でのマスコミ報道はほとんどなく、さらに日本政府も当初は全く無視していたのに、後づけのように祝意を述べようとしたところ、監督がそれを辞退したということで、ネットでは大きな話題を呼んでいました。
東京の下町のボロ家で、万引きをしながらも愛ある暮らしをしていた「家族」の秘密が明らかになっていくというストーリー。
観終わってすぐにはコメントが浮かばなかったのですが、映画館を出て、帰りの車で妻と話すことで、この映画がなぜこのタイミングでパルムドールを受賞したのか、少しずつ分かってきました。
私なりの感想を一言でいえばこの映画は「是枝流の秀逸なドキュメンタリー」。
劇中のこの一家が直面している問題は、いまの日本の現実で、それが是枝監督と素晴らしい俳優陣とによってドキュメンタリー作品になっているのです。
2020年のオリンピックを控え、海外への積極的PRが莫大な予算で進められている現在、多くの人が外から見ることができる日本は魅力ばかりの素晴らしい国でしょう。
そこに重くて大きな一石をドカンと投じたこの作品の世界観に、カンヌの審査員は大きな衝撃を受けたのだろうと想像できます。
そして、この映画が日本の映画史上最高の栄誉にも関わらず、政府をはじめマスコミが冷ややかに無視していたという理由も理解できました。
しかし問題をそこに求めるつもりはありません。
今の日本で起きていることは、すでにこのブログでも散々お伝えしているからです。
最も重要なのは、この作品がパルムドールを受賞した理由、そしてこれを観た人達がどこまで自分ごととしてこの「是枝流ドキュメンタリー」に向き合えるかどうかというところだと感じています。
感想は非常に分かれるとは思いますが、私にとっては一人でも多くの人に観てもらいたいと思う作品でした。