第399回「幸福度世界一の国」デンマークレポート⑥

ここまで6回にわたりお送りしてきたデンマークレポートもアクティビティ最終日を迎えました。

私と妻はツアーメンバーと別れ、2日ほどデンマークに滞在するのですが、このスタディツアーの旅程では今日が最後。
本当に充実した毎日、過ぎてしまうとあっという間でした。

宮殿前広場。
宮殿前広場。

午前中の自由行動ではデンマーク国王一族の住むアマリエンボー宮殿へ。
ちょうど衛兵交代の時間に広場へ行くと、多くの観光客がカメラをもって集まっていますが、人員整理をしているおまわりさんも威圧的ではなく、のんびりした空気を感じます。

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宮殿は国王・女王・皇太子の宮殿が並び、旗が立っているときは在邸しているという証なのだとか。
たまにはテラスに誰かが出てきてみんなに手を振ったりすることもあるそうで、先ほどお話した警察官の雰囲気も併せ、平和な国なのだなと肌で感じます。

イギリスのそれと同じように、のっぽの帽子をかぶったオモチャの兵隊のような衛兵たちが足並みをそろえて行進する様子。みんな若い青年たちです。
私はこれまでこうした王宮には行ったことがなかったので、まさに観光客丸出しで写真をたくさん撮りました。これはこれで楽しいですよね。

これ以上近づくと制止される。観光客丸出し。
これ以上近づくと制止される。観光客丸出し。

さて、午後になって今回のツアーのなかでも、個人的に最も楽しみにしていたプログラムへとバスに乗って出発。

それは、40年前にデンマークで起こった原発建設計画を中止させた市民NGO「OOA」幹部シーグフリードさんのご自宅にお伺いしてのインタビューです。

ニールセンさんを除いては、日本人としては私らが初めてであろうとお聞きし、身の引き締まる思いで訪問しました。

コペンハーゲン市内の閑静な住宅街に、彼のご自宅はありました。
シーグフリードさんは、当時一緒に活動していたベンテさんと一緒に優しい笑顔で迎え入れてくれました。

OAA幹部シーグフリードさん(右)とベンテさん(左)
OOA幹部シーグフリードさん(右)とベンテさん(左)

居間のテーブルにはデンマークらしくチョコデニッシュがあり、和やかな雰囲気の中でインタビューははじまりました。
デンマークでは1970年代、なんと国内エネルギー自給率は4.9%と、日本よりも低かったそうです。
そこに当時中東で起きたオイルショックに危機感を感じた政府と電力会社が、ロラン島をはじめ国内で15箇所に原発建設の計画をはじめました。

そこで市民たちは「原発というものに反対するというよりは、原発というものをまずは知ろう」という目的でOOAを発足。
政府が原発計画発表の2日後に記者会見を開催、活動を開始します。

彼らがまず提言したのは
1.3年間のモラトリアム(猶予)期間を儲けてほしい
2.原発以外の代替案も作成してほしい
3.国家としてのエネルギー政策を考えてほしい
ということ。

そしてその後、専門家と市民との勉強会、政治家へのロビー活動、市民への認知拡大のグッズの作成やイベントの開催などを、戦略的に開始。
それはどんどん国内に広まり、その危険性や経済性を理解した反対運動が巻き起こるようになります。

この「原発?いりません」の太陽のロゴは、世界55言語に翻訳され広まっている。
この「原発?いりません」の太陽のロゴは、世界55言語に翻訳され広まっている。

ただし反対運動はあくまでも平和的に行おう、ということで、1978年、コペンハーゲンへの大規模なデモ行進でもギターを手にした若者がライブをしたり、テントで共同生活をしながらといった楽しいものでした。img_6798
この写真を見たとき、なぜだか胸に熱いものがこみ上げ、目頭が熱くなりました。

その結果、デンマーク政府は3年のモラトリアム期間の終了を待たずに原発の建設計画中止を発表、2050年までには全ての国内エネルギーを再生可能エネルギーにするという政策変換を行うことになったのです。

この運動はさらにそれだけではなく、対岸のスウェーデンでも計画されていた原発建設をも停止させるまでに至ったのです。

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気がつけばニールセンさんが逐次通訳しながらも延々2時間を経過。周りは夕方になっていました。
最後に私らが作ったステッカーをプレゼントし記念撮影、お二人に別れを告げてインタビューは終わりました。

OAAシーグフリードさんと一生の記念になる記念撮影。
OOAシーグフリードさんと一生の記念になる記念撮影。

戦後気がつけば54基もの原発をつくり、そして2011年にそのひとつが爆発、想像もできないほどの被害を現在も未来にも残しながら解決していない日本の現状に絶望していた私にとって、彼らとのインタビューは何者にも代えがたい勇気を与えてくれました。

そしてこの大変貴重な時間を割いてくれたOOAのお二人と、このインタビューをセッティングし逐次で通訳してくれたニールセンさんにも心から感謝しています。

今日は本当に長くなってしまいましたが、ここは機会をみつけてもっとゆっくりお伝えする機会をつくりたいと感じます。

デンマークと日本、いろいろな問題はあれど、どのように国民的な意識に訴える活動をしていくべきなのか、本やネットだけでは感じ取れない「思い」の部分は、やはり直接お二人のような人にお会い出来たからこそ。

これを私らが日本で少しでも伝えていけたらと思っています。
これで一旦デンマークのスタディツアーは終了ですが、全体を通じて感じたことをまとめでもう一回書かせていただきたいと思っています。
もう少しお付き合いください。

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