あけましておめでとうございます、本年もよろしくおねがいいたします。
雑誌の編集に移ってからも、ファンサイトで培った飲み歩くスタイルは変わらずに、2016年を生きていきたいです。
さて、僕の編集する雑誌『装苑』ですが、今年が80周年。記念に1月号よりリニューアルを敢行いたしました。
1月号の特集は「NEWCOMER & NEW CREATION みたことないものが、みたい。」。
デザイナーからスタイリスト、アーティスト、ミュージシャンなど各界のニューカマーを探し、特集しました。
2月号の特集は「音楽とファッションとエモーション」。
音楽とファッションの関係を、今をときめくアーティストたちの情熱に着目して取りあげました。
もし、書店で見かけましたらぜひ手にとってください。
僕の名前はクレジットされていませんが、どこを担当したのかは趣味丸出しなのでわかる人にはわかるはずです(笑)。
御陰様で1月号、2月号ともに好調な売れ行きです。
さて、これらの特集内容、ファッション誌としては異端かもしれません。
しかし、ファッションの置かれた状況は昔と比べて大きく変化しています。
ファストファッションが幅を効かせ、無難であることが社会の制服のように課せられる傾向のなか、
多くのファッション誌が「一週間着回しコーデ」や「時短メイク術」などで需要の喚起を計ってきました。
しかし10年代に入り、その情報はNAVERまとめやバイラル系ブログによってカバーできるものになりました。
もはやそれら実用情報はお金を払って得る情報として機能しなくなったといえます。
逆張りと言いましょうか、『装苑』という雑誌は敢えて実用の逆を行く独自性に、生き残りをかけていると思います。
先端と個性を重んじ、「モテ」の「モ」の字もダサい、そこに共感するファンによって商品価値を維持するという戦いです。
ファンサイトの仕事のときも感じていましたが、行き過ぎたマーケティングによる世界の平板化は、消費そのものを衰退させる気がします。
ウッディ感のあるテーブル、ミニマルなデザインの白皿、ロコモコプレートにオリジナルブレンドのハーブ茶のセット、音楽は適度に大人しめのハウスミュージックで、テーブル会計1,350円。
「都会で暮らす情報感度が高い若者が集う、ハイセンスな時間を提供する都市型カフェ」とかの企画書の口上が透けて見えるようなカフェが街には溢れていますし、それは例えば僕のような20代後半独身男性がデートで使うなら、まず候補にあがるだろうというマーケティングの結果なのかもしれません。
けれどもそのカフェで同じ時間を過ごすなら、僕は大井町の「永楽」で餃子で瓶ビールをチビチビやりながら、締めに中華そばを食べるデートがしたい。これは別段特殊な話ではなく、感覚として同じ世代にはある感じがします。
人は必ず逆振りを求めます。この人のために用意されすぎたものは、もうその人が必要なものではなくなってしまう気がします。
文化史は、トラディショナルとアヴァンギャルドが振り子のように揺れ動いた、その積み重ねでした。高度情報化は、この振り子の揺れを年々加速させている気がします。
情感への敏感さを、手触りや味へのフラットな評価軸を、新たな逆張りのための積み重ねが、今年も多くあればと思います。