船井総研コンサルタント 長島淳治氏 × ファンサイト(有) 代表取締役 川村隆一
- 川村:
- 今回は船井総研の長島 淳治さんをお招きしました。じつは長島さんは拙著「企業ファンサイト入門」を読んでメールをくれた初めての読者さんなんです。
さて、船井総研といえば、企業コンサルテーションをメインに据えた会社という認識ですが、その中で長島さんはいま、どんなことをメインにやっていらっしゃるのですか?
- 長島:
- 私はいま、ソフトウェア業の中でソフトハウスといわれるソフトを作っている会社を専門に年商30億未満の企業のコンサルタントをやっています。
- 川村:
- ということは、中小企業のオーナーの方や幹部の方を相手にすることが多いわけですね。そういうところで共通してもっている問題点というのはどんなことですか?
- 長島:
- そうですね、私の言葉で言うと「元気がない」ということです。経営者が光り輝いていれば会社も輝いてきます。経営者の輝きを戻してあげたり、磨いてもっと光るようにするのが私の仕事ですね。
年商で3億くらいになると「お山の大将」になるんです。年収は1000万を超え、従業員はだいたい自分の言うことを聞いてくれる。お客さんも自分が知っているお客さんだけで済む。それってすっごく気持ちいいんです。ソフトウェア会社でいうと3億で30名の従業員を抱えるくらいの規模がこの第1次ゾーンになります。その先の40名・50名の社員を同じ方向に向けるにはもっと大きな志が必要になり、企業体としては新しいものに変わらないといけない転換点になります。データをみても16,000社ある業界全体の63%が年商3億未満。10億未満になると85%です。だからたった15%しか10億の壁は越えられないんです。
- 川村:
- 経営者を元気にする、という長島流のやり方はどういうものなのですか?
- 長島:
- まず大前提なのが、経営者の方よりわたしの方が元気だということです。「こんにちは!」と元気に行けるかどうかを考えます。そして、わたし自身は「基本的に人は変わらない」という考えをもって接しています。でももし、変わるとすれば、わたしが変えるのではなく、あくまでも経営者の方が自分で気がついて「変わる」という道を選択したときに初めて変わるのです。だから、「変えよう」と思っているとイライラします。変わらないから(笑)
- 川村:
- なるほど(笑)
- 長島:
- というのも、わたしが経営者の方と会うのは月に1回です。月に1回で人が変えられるなら、「カリスマなんとか師」になって船井総研にはいません(笑)。
だから「変わらない」というのが前提ですね。たぶんわたしと契約するということは、なにか変わりたいという願望を持っているのだと思います。でも、強制的に誰かに変えられたくはない。ただ、自分で何かを気付いた人から変わりはじめます。
- 川村:
- 気づきのボタンを押してあげるのが仕事ということですね。
- 長島:
- そうですね。だから、経営者の方と話すときに常に注目する点はその方の話し方や口癖ですね。全体的にマイナスの言葉が多いとか、話をしたときに「でもね」とか「いやいや」という言葉が多い人は相手の話を聞く準備が出来ていない。会社でも同じようなスタンスを取っているな、というのが見えてきます。不思議なことに、話し方にいまの心理状態が現れます。
- 川村:
- なんだか、心理学の世界ですね。
- 長島:
- 多くの経営者の方にとって、わたしは年齢も下ですし経営の経験もありません。ただ、船井総研はマーケティングの会社と思われていますが、対極に「船井流の哲学」があります。これがあるから、経営の経験もないわたしが心に響く言葉を投げられるのかなと思っています。しかし、経営者の心がわたしの言葉が受け止められる状態になってない場合、響くのは難しいでしょうね。
- 川村:
- それっておもしろいですね。変わりたいと思っているけど、人の意見を受け入れられないというジレンマというのは。人の話を聞くというのは、いろんなスキルの中で一番必要で、一番難しいことかもしれませんね。言いたいことを言ったり、説得したりというのは誰もがやりたがるけど、聞くというのはものすごく能力が必要ですよね。
- 長島:
- そうですね。ほとんどの経営者というのはもともと聞くよりも喋る方が得意な方々ですし、首を切られたくないまわりの人は社長の話をよく聞くでしょう(笑)。だから突然、対等に喋るような人間がやってきてグーの音も出ないようなことを言われたらフラストレーションが溜まるでしょうね。
- 川村:
- 長島さんは船井総研に入って4年ということですが、今後どういう方向性に進もうとお考えなのですか?
- 長島:
- ひとつは日本を元気にしたいという思いがあります。そのためには95%を占める中小企業を元気にしたい。そのなかでもソフトハウスを対象にやっていきたいと思っています。今後、日本のマーケットはどんどん縮小していきます。成長・拡大だけが幸せではなくなり、どういう方向を選択するのか迫られる時代が来ると思います。そのなかで個性を発揮しあって光り輝くようにするためにはわたしの影響力がまだまだ弱いと思っています。
- 川村:
- なるほど。
- 長島:
- いまメルマガを配信しながら無料の小冊子を配っています。マスとしては日経ソリューションで連載をはじめました。あとは地方で80社くらいの企業にお集りいただき、講演会を開催していますが、そうした方法で直接支援はしなくとも、考え方に共感してもらえる人を増やしていきたいと考えています。
- 川村:
- 基本的に長島さんのお考えをどうやってインフルエンスしていくかということですね。さらに、その先に長島さんにとってのファンを醸成していくことでしょうか。ということになると、長島さんにとってファンというのはどういうものですか?
- 長島:
- メルマガをやっていて良かったと思うのは、ある時からメルマガの書き方を変えたんです。それはわたしのメンターから連絡入って「長島さんのメルマガつまんないよ。確かにその通りだけど、なんか読んでいて暗くなる」って言われたのです(笑)。そこで、船井総研の哲学を語ることは変えずに、難しい経営理論ではなく自分の言葉で語るようにしたのです。そうすること、メルマガを読んでくれる人が増えたのです。自分なりの哲学をしっかり持っているということ。それを発信したときに共感してくれた人が本当のファンなのだと思います。
- 川村:
- 僕自身、ファンにこだわって仕事をしてきたわけですが、結局のところ、哲学に共感した人たちというのはブレないですからね。僕もファンサイト通信を出しているのですが、自分の言葉じゃないと書き続けられないし、どれだけ自分をさらけ出せるかですよね。
- 長島:
- そうですね。
- 川村:
- もう、時間が来てしまいましたまた、また、このようなお時間をもたせて頂ければと思います。本日はありがとうございました。
- 長島:
- こちらこそありがとうございました。